暖かさを求める






突然に、抱きしめて欲しくなる時がある。

それは、本当に唐突で自分でも戸惑うほど。どうしていいかもわからなくて、ゴロゴロと自分のベッドに暖かさを求める。
この季節のお昼時には、頼まれなくても汗が出るほどに温まっているベッドは、格好の代用品。

まるで誰かの熱い体温の中にいるよう。

さすがに何分も動き回ると暑くなって、じんわりとにじんだ汗を落とそうと起き上がる。自分で温かさから逃げるのだ。
ヒタリと感じる心地よい床の冷たさは不覚にも気持ち良い。
しかし一瞬でぬるま湯に変わっていくことに嫌気がさして歩きはじめた。



たどり着いた風呂には、先客がいるようだった。
誰かと考えなくても荒い音で分かる。

少し気落ちしながら風呂の前を去っていこうとする。しかしパタッと開いた扉。
その音に振り返ったとたんいる、

「何やってんだ?」

エドは爽やかな石鹸を振りまきながら私を見つめた。
タンクトップに短パン、そして肩にかけられたタオルですら涼しそうに見えて、暑い空気を吹き飛ばしてしまっていた。
いうなれば、温かそうで、涼しそうで。

「ベッドは暑かったの」

訳の分からない答えを返しながら、彼をぎゅっと抱きしめてしまう。

「え?」

当然のことながら戸惑う彼を無視して、更に腕の力を入れる。
けれど私の力は彼を包み込むほどの力はなかった。

「ちょ、ウィンリィ?」

こんな所で急にどうしたんだなんだと質問をどんどん繰り返してくるエドになんだかイライラしてくる。黙れとばかりに一発唇を奪ってみる。
そして耳元で「ぎゅってして」と囁いてみる。

狙い通りに静かになった彼は、のろのろと手を私に回す。

「…どうしたんだ…オレ乾ききってないから……濡れるぞ?」


なんだかだんだん子供をあやすような口調に、しぐさになっている彼。

そんな風にされたかったわけではなかったけれど、望みがかなったので文句は言わない。

「いいの、だから、もっと」

私の中の何かが足りなくなってるから。
ドクドク聴こえる鼓動に強い腕、それから石鹸の香りとエドのにおい。それ全部私を包んでいるんだと思うと深呼吸がしたくなる。

どうしようもない不安が飛んでいくような気がした。

「こんなことしたら、さ」

所構わず我慢できない、なんて言われてしまったけれど聞いていないふり。そのままで頑張ってほしい。
もっと抱きしめて、というと部屋行く?なんて言ってくる。そうじゃないんだけど。



でも、ベッドにあんたのあったかさを刻んでくれるなら、それもいいかも。
















夏に書いてたのを放っていたのでなんだか季節はずれです。
最近自分の文章の表現の狭さに絶望した!!(笑)もっとこう!あんな感じで書きたい!(とむずむずして堪らんです)
女の子が迫ってみるのにも最近憧れます。