兄さんがたばこを吸っておりますのでご注意ください。必然的に未来設定。
エドウィンですがウィンリィさんは出てきません…































「兄さんって煙草吸ってたっけ?」

アルフォンスは部屋に入った瞬間苦笑いした。

「あ?」

不機嫌そうに眉をひそめて長い金の髪を乱しているのはエドワード。
言葉を放ったついでに煙草を灰皿へ潰しこむ。机座って紙に数式を書きながら、弟に目線も送らない。

「だから、それ」

アルフォンスが指を指したのは、空気が動かず煙がもよもよと漂うエドワードの辺り。

「・・・別に」

アルフォンスはため息をつきながら核心を突く。

「ウィンリィはどこ行ったの?」

エドワードは一瞬だけ体を強張らせて、ペンが止まる。
しかしそれを、なんでもないかのように取り繕おうとする。

「しらねーよ」

相変わらずな上に嫌なところだけ大人になってしまった兄に、年月を感じながらアルフォンスは机へと近寄った。
苦い匂いが鼻につく。ふと、ハボックはこんな匂いをしていたのだろうかなんて思う。そして淀んだ顔を覗き込んだ。

「謝ればいいのに」

澄んだ鈍い金の眼に見つめられてエドワードはバツの悪そうな顔になる。

「ほっとけ」

このままウィンリィの話をしても、兄はつっぱるだけだとアルフォンスは確信する。
前からそうだったのだが、彼女と兄がきちんと恋仲になってからはもっと酷くなった。
弟から幼馴染…いや、自分の彼女のことを言われることに若干の引っかかりがあるのかなんだか知らないが、要は兄の独占欲と言ったところなのか。




「体に悪いよ、それ」

そう言って煙草についての感想を言って話題を変えてみる。

「…いつもは吸ってねーよ」

「ウィンリィと喧嘩してむしゃくしゃしたときだけ?」
言ってアルフォンスは、しまったと思う。せっかく変えた話題は結局戻ってしまった。
まあ、兄の問題が今はそこにしかないのだからしょうがないと言えばそれまでだが。
思った通りすごい形相の兄がこちらを睨んでいた。

「・・・。お前な」

いつまでたっても子どもである兄に頭を抱えたくなった。

「今回は兄さんが悪いと思う」

「なんでそんなこと……」

「んーなんとなく。悪かったなって顔に書いてるから」

はっとした表情の後、少しだけ顔がいつものように戻ってきたエドワード。頭を掻き毟り深呼吸する。





やっとアルフォンスの方へ顔をしっかりと向け、元気がないながらも唇をニッと上げる。それにアルフォンスは安堵した。

「・・・分かってる、アル。…この仕事終わったらちゃんと謝るから」

「え、兄さんでも」

そんな悠長なこと言わずに今すぐにでもウィンリィに…と言おうとしたが、

「これ終わってないと、ゆっくり一緒にいられないからな」

大丈夫だよ、ありがとなと言われて部屋を追い出される。
謝ったら絶対にうまくいくなんて、どこから湧いてくる自信なのか。
呆れてしまいながらも、相も変わらず仲の良い兄と幼馴染になんだか嬉しくなってくるのは、やっぱり自分がアルフォンス・エルリックだからなのだろう。
本当は自分の家に来て困った顔をしていたウィンリィのことを報告してやろうとここへ来たのだが、たぶん兄にはお見通しなんだろうとさっきの笑顔をみて思った。

「ボクを巻き込むのやめてよね」

アルフォンスはそう独り言を言いながらスケジュール帳を出して、夕方からのデートの予約を確認するのだった。
 



















煙草って仕草は好きですが、煙が苦手な私にとっては関われない存在です。
吸ってる人の横通るだけで咳き込むし。嫌味みたいになって申し訳ないと思いながらも…しょうがない。
吸う吸わないは個人の自由と思いますが、友人が煙草をやめると言いながら胸ポケットに毎日入ってるのが気になってしょうがない。