(なんだか恋してる二人。)








今日のリゼンブールは、爽やかな風が一面の青空と若草を通り抜けていた。
ウィンリィと買い物に出ていて、二人でバケットやらジャガイモやら……、牛乳やらを両手に抱える。
話の間ができた瞬間、隣にいたはずの彼女は突然走りだした。

「え、ちょ…ウィンリィ?」

ひらりひらりと白いワンピースが揺れながら、少しずつオレから遠ざかっていく。
追いかけねばと右足を出した瞬間、振り返った彼女は満面の笑み。
青い空をバックに夏の日和のようなウィンリィにドキリと胸の音が響いた。

「エド!」

オレは格好悪く、走りかけた変な体勢。
それに少し笑いながら、彼女はそのままこっちへ向って走りオレの胸へ飛び込んできた。
勢いが強すぎて、続く心のポンプはどくんと強く血を送り出す。
この音が彼女まで届くような気がして、少しだけ気恥しい。
抱きしめあうなんて、生まれたときから数え切れないほどしてきたけれど、未だに慣れない。
否、正確には時がたてばたつほど、抱きしめれば抱きしめるほど毎回動悸が激しくなっていっているような気がするのだ。

「どうしたんだ?突然」

「ううん」

彼女の腕のしまりがぎゅっと強くなっていく。

「エド、ドキドキしてるね」

「じゃなきゃ死んでる」

生きているから脈打つ心臓。
一生に何度ポンプが動くかというのは決まっているらしいが、今のオレは生き急いでるのかと思うくらい強く早くドクドクと言う。

そう。それは生きるために脈打ってるって言うか、

「今、精一杯叫んでる」

お前に、

「何を?」

「ひみつ」

恥ずかしいほどの愛おしさを。

「えー」

「ほら、早く帰るぞ」

そうさりげなく手を差し出す。
そんな些細なことにすら、思った以上にどくりどくりと速いリズムを刻む。
そんなオレの胸の主張に気付いているのかいないのか、彼女は嬉しそうに手をぎゅっと握り返してくれるのだ。

「うんっ」

この丘を登れば家につく。屋根が少しずつ見えてきた。
彼女の手が暖かい。

「あー…やっぱり、遠回りするか?」

家を目の前にしての言葉に、ウィンリィは少しきょとんとしていたが握る手をもう一度強くして笑った。

「そうだね、今日は天気がいいもの」

そして二人でせーので回れ右をした。
広がる青空は何一つ変わっていないようだけれど、向かい風がとたんに追い風になって心地よかった。


















夏の暑い日に書いてたのですが、もう寒くて思い出せません。
リゼンブールと青空と草原とウィンリィさんっていうのがとても好きみたいです。