バレンタイン(映画エドウィン)
この世界で今日は、愛の聖者が死んだ日らしい。
死んだけれども、恋人達がなぜか愛を語る日らしい。
それを聞いてなんだか可笑しく思えた。
なぜって?
たぶん、
オレにとって愛を語りたい、と思う奴はそんな行事を知りもせずに生きていて、
オレは鼻で笑いながらあいつを思い出してしまうんだから。
そんな本日。
オレの手には赤いバラ25本、
真っ赤なワインを揺らして、
恥ずかしいほどのピンク色のカード。
向かった先は、あの研究施設。
残骸となったロケットはもちろん撤去されていて、がらんとしている。
彼の夢は別の場所でもう一度動き出していて、そこはもう静かな場所となり果てていた。
門となった天井は暗く、どんよりとオレを迎えた。
一人。
一人佇む。
もうあれから7年がたっているけれど、全てが変わったようだけど、
オレはワインのコルクを勢いよく開け、
そしてぶちまける。
届くかな?
届かないだろうから、一生懸命に赤を散らすよ。
一面が鈍い赤に染まった所で、その上に更にバラを散乱させる。
真っ赤がオレを覆う。
なんてハイセンス。
赤は情熱の愛。
そんな言葉は寒々しいって?
まあ、これみたら分かるって。
オレの赤。
満足したので、最後の仕上げ。
赤の真ん中に、ぽとんとピンクのカードを落とす。
言葉に発したこともない、愛のセリフ―――
届かないから、できる。
でも届けばいいなと心の底が疼いた。
一人。
一人赤の中で佇む。
今日は一日中、お前と。
映画後の話。エドウィンはやっぱり死ぬ前にちょっとだけ再開するんだと思ってます。