海の中でも君を思う・序章
「じゃあ、僕は帰るよ」
そう言った物腰柔らかな青年は、高級そうなドアを丁寧に開けた。
そして振り返り、一糸纏わぬ彼女を見た。
「さよなら」
彼女は白い肢体の全てを隠そうともせず、ベッドに座って窓を見つめたまま、捨てるように言った。
外の灯り達は遠い。
青年は,彼女の子どもの様な言動と,女性らしい声と姿のギャップに、鈍い金の髪を揺らして苦笑する。
それからもう一度彼女まで戻り、掠めるようなキスを与えて
「好きだよ、ウィンリィ」
と言って、今度こそ出て行った。
それを目だけで見送った彼女は、そのままベッドに身体を預けた。
「・・・・・何でこんな事になってるんだろう・・・・
私の愛なんてもう、終わってしまったのに。」
そう呟いて、唇をぬぐった。
戻 次