海の中でも君を思う・3
「ちょっとぐれー付き合ってくれたっていーだろ?」
「冷たいねー、姉ちゃん」
薄暗くなる町を、街灯が照らし始める。
エドワードは仕事終わりに、嫌な場面に出くわした事にため息をついた。
大通りに少し逸れた路地。
女の人1人に男2人がたかっている。
彼女は明らかに拒んでいた。
「ちっ」
舌打ちしながら彼女と男の間に入る。
「嫌がってるだろ?」
男をよく見れば弱小マフィアの下っ端で。
「いいご身分だな、お前ら」
彼は金の眼で睨みつけた。
「な、何だキサマ!」
1人が身をすくめながら吼えた。
それをもう1人が制する。
「や、やめろ、コ…イツ、エドワードとか言うあそこの奴だぜ」
「!!!」
「逃げるぞ!」
2人はそのまま去っていった。
エドワードはもう一度ため息をついて振り返りながら、
「あんたも・・・・・」
「エドワード・・・・さん?」
彼はその声に目を見開く。
よくその人を見れば。
思うより鮮明で明るいハニーブロンドを揺らし、蒼い目を潤ませている彼女で。
「また・・・・逢えた」
彼女は笑った。
エドワードは頭から離すことのできない彼女が、思いかけず現れた事に眩暈を起こしそうになる。
それこそ尊すぎる「女神」に出会ってしまった時のように。
「何で・・・・」
その言葉しか出てこなかった。
“逢いたい”とは思っていたが、あうつもりは毛頭なかった。
そんなエドワードの思いとは関係なく、彼女の笑顔がしがらみを溶かそうとする。
ウィンリィにはそんな彼がぼぉっとしているようにしか見えない。
「・・・・大丈夫?」
と、彼を覗き込む。
それに気づいた彼は驚き、焦る。
「な、なんだよ!!」
思わず赤面するが、彼女は気にする事もなく
「何よ、あんたがぼーっとしてるから心配しただけよ?」
と少し怒ったように言う。
「お、お前の方が大丈夫なのか?!ガラ悪りー奴に絡まれてたじゃねーか」
それを言われた彼女は冷静な顔になる。
「よくあることだから」
しごく普通に、そして冷たく言う。
「?!」
「最近はなかったんだけど、よく男の人に付きまとわれる事はあるから」
「・・・・・・それって・・・大丈夫なのか?」
言いながらエドワードは目を見張る。
「私、付き合ってる人がいたの。その間こんな事なくなってたんだけど。別れたらすぐこれね、なんでそんな事分かるのかしら」
彼女は乾いたように笑った。
彼はさらになぜか分からない、もやもやしたショックを受ける。
「彼氏、いたのか?」
「そこ?うん、いた。」
「・・・別れた?のか」
「そう。って、振った私が悪いけどさ。こんな話やめよう?」
彼女は無理やり明るい声を出して話題を変える。
「どうせ、ガーゼ変えてないんでしょ?家来たら?コーヒーぐらい出すから」
エドワードとしても新しい話題には乗りたかったが、思わずため息をこぼした。
「・・・・だから、お前さ。さっきの事もあるのによく、知らない男信用できるな」
「うーん、あんただから。かな?」
少しはにかんで言う。
残念ながら彼に、その表情が「恥ずかしそう」と言うことに気づくほどの敏感さは無かった。
結局、ウィンリィの笑顔に流されて家まで行ってしまった。
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