(鋼 エドウィン夫婦+子な話)
















真夜中に玄関のあく音がして、ウィンリィは足早にそちらの方へ。
暗い廊下も歩き慣れたもので、特に不自由もなく玄関。

「おかえり」

「起きてたのか?」

出迎えられたエドワードは上着を脱ぐこともしないまま彼女に抱きつく。

「うん、今日は帰ってくるって言ってたじゃない?」

お互いにぎゅーとしながら暖でも取ろうというのか。

「あいつは?」

「寝てる、でも待ってたんだよエドのこと」

だからもう廊下の電気は消してしまった、と。
父を待ちながら夢へと落ちていった彼を起こさぬように。

「お前、風呂入ってからだいぶ時間立ってるだろ?髪、冷たい」

何度確かめれば冷たいことが分かるのかと言いたくなるくらい髪を撫でる。

「あ、乾かすの忘れちゃった」

「あ、じゃねーよ。風邪ひくぞ?」

エドワードは更に彼女にきつく抱きつく。

「もう寝ろよ、湯冷めして体調崩したら元も子もない」

「だいじょーぶよ、パンでも焼いて食べる?」

美味しいの買ったの、と笑顔で言われればじゃあとしか言えない。



リビングも一つのランプをつけるだけで、ほのかな明かり。
トースターのジジジという音がゆったりと聞こえてくる。

「はぁー」

といいながらソファにどっかりと座ったエドワードに、ウィンリィは笑う。

「あんたもすっかりおじさんね」

「ほっとけ」

彼女は更に笑いながら横に座る。

「おつかれ」

いつの間にか持っていた二つのカップのうちの一つを渡す。

「おっサンキュ」

二人で一緒に温かい飲み物にほっと息をつく。

「やっぱ、おちつくなー」

そう言うエドワードにウィンリィが少しキョトンとして、
笑みをこぼす。

「あんたが落ち着く、なんてこと言うなんて。私も年取ったかも…」

そう言って彼の肩に寄り掛かってみる。

「悪かったなー」

ずずずと飲みながら、寄り掛かってきた彼女を睨む。

「ううん、嬉しいのよ」

あんたが落ち着くのがここであって。
二人は顔を見合せて笑う。

「んなの、当たり前だろ?」

と言って、エドワードは彼女と見合わせた顔をそのまま近づける…


「うんっあ、パン!!」

距離3cmの所でウィンリィはバッと立ちあがってトースターへ。
エドワードは苦笑い。

「お前なー」

それは無しだろ…
すぐに彼女は帰ってくる。

「なんとか焦げてなかったよー」

なんとも雰囲気のない彼女。相変わらずだな、なんて思う。

「ほら、いい匂い!」

渡されたパンは持てないくらい熱くて。
ひとちぎりしてちょっぴりの不満と一緒に口へ突っ込む。

「熱っ お!美味い」

「でしょ?」

パンは柔らかな匂いを充満させる。





「…なんか食べてるの?」

目を擦りながら、部屋の入口の前で立っている少年、

「あら、起きたの?」

先に気がついたのはウィンリィ。

「ん、なんかいい匂いしたから……父さん、おかえり?」

まだ寝ぼけた様子で、言葉に疑問符がつく。

「おう、ただいま。お前も食べるか?」

エドワードは笑ってパンをちぎって彼へと渡す。

「うん、あれ?僕起きて父さん待ってたのはずなのにな…」

おぼつかない手でパンを受け取る。

「ははっありがとな」


ウィンリィが電気をつけ、ぱっと明るいオレンジの光が灯る。

「じゃ、もうちょっとパン焼いてくるね」

「ああ」

彼女は微笑んでからキッチンの方へ行く。
父子がパンを頬張りながら笑う。




「かーさん、早くーっ」

「はいはい」

「ウィンリィー早くー」

「はーい」




真夜中にトースターの音が暖かい光の中から聞こえる。













なんでもない話が好きなんです。
某CMであんまりに焼きおにぎりが美味しそうでした。