はい、約束の。
(鋼 幼馴染)




「おいしい?」

彼女は少しだけ幸せを混ぜたため息をついた。
言った言葉が兄弟2人ともに届いてないことにちょっと腹が立ったけれど、
「もう、二人ともそんなにがっつくのやめなさいよ」
と、文句の一つでも言えばどうしても笑いしか出てこない。
2人はそう言われても気がつくことはなかった。目の前のアップルパイの虜。
彼女がしょうがないといわんばかりに去っていこうとした時に、
「うまい!」
「おいしい!」
という二人の歓声が上がった。
「…もうちょっと落ち着いて食べてよ」
あっという間にアップルパイは姿を消していって、「まるで魔法みたい」なんて彼女は遠くで思った。
「だって、な」
「うん」
兄弟2人は当たり前のように顔を見合せる。
この時すでにアップルパイは跡形もなくなっていた。
手についたカスまでご丁寧に舐める兄。
皿に落ちたリンゴをスプーンに掬う弟。

「ウィンリィ、ありがとう」
アルフォンスが言った。
「ずっとずっと食べたかったんだ」
彼の笑顔に思わず彼女はこみ上げる。
それを隠すように、
「料理、うまくなったでしょ?私もずっとずっとアルに食べて欲しかったの」
言いながら抱きしめる。
彼らが帰って来た時に、これでもかという位引っ付いてた彼女だったけれど。
「ありがとう」
兄を尻目にアルフォンスは彼女を抱き返す。

と、思ったらウィンリィは彼からべりっと剥がされる。

「お前なー、いつまでアルに引っ付いてんだよ」
そう言ったのはエドワードだった。
その行動に彼女が呆然とする。
「へ?」
ほのかに焼けたパイの匂いがぽかんとした空気に流れ込んだ。
「…ってもう一枚焼いてたんだ!焦げちゃう!!」
彼女はそんな空気を振り払って、台所へ駈け込む。


「…兄さん」
「あ?」
彼女のいない空間に少し芳しくない空気が出来上がった。
「ウィンリィが僕に引っ付くのが嫌なら、はっきり言えばいいじゃないか」
「は?」
「とぼけないでよー、もう気掛かりは無くなったんだから、さっさと言えば良いのに。それに」
「…」
「心の狭い男は嫌われちゃうからね、兄さん」
満面の笑顔でアルフォンスが言う。
それと同時にエドワードは渋い顔をした。


「はい!もう一枚できたわよー?」
先ほどのことなんか忘れたウィンリィが帰ってくる。
「わ―い!」
アルフォンスが極上の喜びを表す。
「いっぱい食べてね」
柔らかい午後が、パイの匂いを充満させた。


その雰囲気に反して、固まっていたのがエドワード。
彼のこの後はいかに。












これはガンガンのふろくのかるたが欲しくて書きました。結局買ってませんが…
見てみたいなーというか、文がどうだったのかが気になる…