君のサンクチュアリ(鋼 幼馴染)





「好きよ、あんた達の事。これは変わらないわ」



そう言ってくれた。

そして抱きしめてくれる。

冷たくしかない僕の体、そして兄さんの腕をも彼女は包み込んでくれた。

華奢で、それでも強くある腕で。





あの時、ありがとうもろくに言えないまま、僕たちはこんな荒れ果てた地へ、君のいない地へ来た。



いつ彼女に会えるのか分からない、



そんな場所に。







地面の光の反射に嫌気。

だらだらと続く見知らぬ土地。

砂が一面を覆い、揺らめく地平線は遥か彼方。











ふと、空を見る。





なぜか空が笑ったように思えた瞬間。

僕らを抱きしめるように、さわやかな風が吹く。



なぜか、ウィンリィがいる、そんな気がした。



嬉しくて、思わず兄さんに言ってみる。

どうせそう思っても素直に言葉にはしないだろうな、とも思いつつ。





だが、珍しく僕の予想は外れた。



「そりゃそーだろ」



あっさり、そして見たこともないほど優しい笑顔で、兄さんは言った。



「オレらはさ、結局あいつに守られてんだよ、いっつも」



はにかむように続けた兄さん。

ああ、そうか、なんて納得してしまう。



別れる前にああやってずっと抱きしめてくれたのは。

風にまで届けるように託してくれたのは。







面白いほど彼女に包まれてる僕たち。









「ありがと、ウィンリィ」



呟いてから、僕は走り始めた。









「は?!待て!アル!!走るな!!」



兄さんが言いながら追いかけてくる。

僕は笑って答えた。



「だって僕、元気になったんだもん!!兄さんは?」



いつもよりも素直な兄さんに訊いてみる。

振り向けば、走り続けらがらも、さっきより恥ずかしそうな顔をしていた。



「……なったけど…」



「けど?」



「…なんでもない」



顔を真っ赤にしている兄さんの思ってることは、手に取るように分かる。



「やっぱりほんとのウィンリィに会いたいんだ!…て言えばいいじゃないか、兄さん」



「言えるか!」



「あっはっは」









言い合いながら僕らは走ってく。





君の笑顔に背中を押されたように。

















この題名はもう3年以上前に作ったもので、気に入ってるものでした。
何とはなしに自分で大事にしてる言葉がつかえたので良かったです。
サンクチュアリは聖域と言う意味だった気がします。