彼女が倒れた理由(サラさんとトリシャさん)










「サラ・・・・私やっぱり直らない病気なのね?」


リゼンブールの草原の中、一軒ぴょんと建っているロックベル家のテラス。
二人の若い女性がお茶を飲んでいる。

「そう・・・・ね。でも薬を飲めば進行は抑えられるわ。大丈夫。トリシャ」

トリシャと呼ばれた栗毛の女性は儚く笑いながら

「あの人、帰って来そうにないわ。もうっ」

と怒り気味に、そして冗談っぽく呟く。

「男って勝手よねー本当。」

と、金髪のサラと呼ばれた女性は同調する。
ふと、

「・・・・エドやアルも、ああなるのかしら??」

トリシャが洩らした。

「まぁ、二人ともホーエンハイムさんに似てるわねぇ」

「あんな人は1人で十分!!3人も似たようなのがいたんじゃ苦労極まりないわ」

二人が笑う。

「ウィンリィちゃんが世話してくれると良いんだけど」

トリシャが軽くウィンクする。

「うちの子に、その苦労極まりない2人世話させるの?」

サラは半笑いで、軽くにらんだ。トリシャはそれを無視して続ける。

「特にエドなんかそっくりなのよねー、ウィンリィちゃんなら何とかしてくれそうじゃない?」




・・・・・・




「あのね、トリシャ。」

しばらくのおしゃべりの後、サラはおもむろに口を開いた。

「ん?」

「・・・・・・私たち、イシュバール戦争に行く事になったの」

「!!!・・・・それって・・・」

トリシャは驚愕した。

「傷ついた人、少しでも減らせるならってユーリと。」

「ウィンリィちゃんは・・・」

「お義母さんに言ってるわ」

「でもっ」

「そうじゃなくて。トリシャの薬できるだけ取り寄せておくから。」

なくなったらお義母さんに言ってと、付け足す。

「嫌よ」

トリシャは即座に言った。

「私、サラにしか薬貰わないから」

「は?何言ってるの??」

「早く帰ってこないと私、困るんだから」

駄々をこねる子どもように、トリシャは続けた。

「分かった?サラ」



「・・・・・・・・言い出したら聞かないんだから。分かったわ」


トリシャは笑顔になる。

「早く帰ってきてね」


















「お母さん!!!」




倒れた時には、もうサラはこの世にいなかった。
トリシャはサラの命が消えたことを聞いても、誰にも自分の病気を言わなかった。
病気の進行は見る見る進み、立つ事さえ出来なくなった。



「サラ、あの人、やっぱり帰ってこれなかったのよ。
私、支えてあげられなかった。

エドとアルも本当にウィンリィちゃん頼む事になるわ。

ヴァンと、エドと、アルと、会えなくなるし、本当に言葉に出来ないほど哀しい。

でもね、サラとまた話せるならちょっとだけ嬉しい。
どうせ、薬貰わなかった事怒るんでしょう?

また草原いっぱいのテラスで話しましょ。」




トリシャは微笑んで、窓から見える空を見上げた。














サラさんとトリシャさんとウィンリィさんは仲良しだといい。
親達の話を書いてみたくなりました。
また書きたいなー